経営理念ってなに?⑥~バリュー編その3~

労務コラム

経営理念ってなに?⑥~バリュー編その3~

前回は経営理念における「バリュー」の捉え方についてお伝えしました。
前回の記事はこちら:経営理念ってなに?⑤~バリュー編その2~

今回は「バリュー」の策定方法について書きたいと思います。
その前にバリューがどんなものだったのかを整理します。

◆日々の仕事において、どのように考え、どのように行動すべきか、望ましい思考(考え方・物事の捉え方)、行動を具体的に記載したもの。
◆マニュアルは行動の答え(出口)が表現されているため、何をすべきかが細かく記載されているが、バリューは行動の基点(入口)や思考プロセスが表現されるものであるため、自分で考え、行動できるもの。

また、バリューの表現方法は、次の2つがポイントになります。

◆バリューは、会社の所属するメンバーの価値観であるため、「私は、~します。」「私たちは、~します。」などの表現が一般的で「~しなければならない。」など義務表現は適さない。
◆バリューには、メンバー同士が声をかけ合いやすくするため、文章に短いタイトルをつけることがある。

例えば前回紹介したプロバスケットボールチームのバリュー「柔軟に、前向きに。一生懸命やりきった昨日の自分と向き合いながら、毎日必ず成長します。」「毎日必ず成長するというタイトルとなっています。

ここまで理解したところで実際にバリューを策定 していくわけですが、偏ったバリューにならないように次の5つのカテゴリーごとに、それぞれのバリューを考えていきます。
①お客様への対応
②自立・自己成長
③仕事の取り組み方
④チームワーク・人材育成
⑤会社の経営姿勢

各カテゴリーに対して2つずつバリューを作っておくのが理想的です。

ここでバリュー策定において一番重要なことをお話しします。
「このバリューを考える主体となるのは誰なのか?」ということです。
経営者が主体となり、経営者が大事にしている思考や行動をバリューとして言語化するのが一般的です。(それらは一般的に「行動指針」と呼ばれていたりします)
ですが、私は経営者も含めた社員全員でこのバリューを考えることを推奨しています。

なぜ経営者だけでなく社員全員なのか?

それは、経営者から社員に一方的に与えられたものよりも、自分達で考えたものの方がより「自分ごと」になるからです。
鍵となるのは「自分ごと」です。
社員達自ら決めたバリューは愛着も湧きやすく、自責の気持ちも芽生えやすくなり、「自分ごと」として捉えやすくなります。

私は経営者も含めた社員全員でこのバリューを考えることを推奨

そうすると、経営者には「それだと自分の理想とは違うものになってしまうんじゃないの?」という不安が残ります。
確かに経営者は、創業当時寝る間も惜しんで働いたり、会社がピンチの時は私財を会社に投げうって支えたり、必死に頭を下げまくって営業するなど、数えきれないほどの大変な苦労をされています。
そのため、経営者が作るバリューのレベルは必然的に高くなります。

ただ、そのようなレベルの高い経営者のバリューを社員に押し付けてしまうと「そのバリューは社長だからできることだよね」と他人ごととして捉えてしまいがちになります。
そのため、ひとまずは社員目線で自分達が大切にしたいことをバリューとして言語化することを推奨しています。

とは言え、バリューの構成要素を100%社員の考えにする必要はありません。
思考の割合が社員60%、経営者40%でもよいと思います。
ちょっとわかりにくいので、実際の事例で解説します。

バリュー策定の事例

ある病院で「お客様への対応」のカテゴリーについてバリュー策定をしていた時の話しです。

バリュー案をスタッフから挙げてもらったところ、あるスタッフから「私たちは笑顔を大切にしたいよね。そして患者様にいい気分になって帰って欲しいよね」という意見が出ました。

バリュー策定での事例
他のスタッフも同意見となり、以下のようなバリューにしようという話になりました。

1.スタッフ案
私たちは笑顔を大切にし、患者様に快適な医療を提供します

それを聞いた院長は「そんなバリューって当たり前のことじゃん」と心の中で思ったようです。

どうしてそう思うのかを確認したところ「笑顔は確かに大切だけど、何も考えずニコニコしていればいいわけじゃない。そんな笑顔が快適な医療に繋がるとは到底思えないんだよね。患者さんは『ちゃんと治るのかしら?』『本当にこの治療で大丈夫なの?』って不安でいっぱいなんだから、笑顔と心配りで安心感を与えることが大事なんだよ」と答えてくれました。

そこで私は「笑顔という点では院長もスタッフも考えは一致しているのですね。では、院長の思考を少し加えてみましょう」と提案し、次のようにブラッシュアップしてみました。

2.ブラッシュアップ後
私たちは明るい笑顔と心配りで、患者様の不安を安心に変え、快適な医療を提供します

そしてこのバリューに変更した意味をスタッフに説明し、これを採用してよいかを確認したところ「笑顔にどのような意味があるかが分かりました。そして院長の言うように、笑顔だけでなく心配りも一緒に届けて安心して受診してもらいたいと私も思います」という前向きな同意を全スタッフから得ることができ、最終的にはこれを病院の公式なバリューとして採用することになったのです。

そしてこのバリューのタイトルはスタッフの意見により「笑顔と心配り」に決まりました。

完成したバリューはこちらです。

3.完成版
「笑顔と気配り」
私たちは明るい笑顔と心配りで、患者様の不安を安心に変え、快適な医療を提供します。

このお話から伝えたいのは、スタッフが作ったバリューをベースに、院長の思考を加えるやり方が、先ほどの「思考の割合が社員60%、経営者40%」という考え方だということです。(割合はイメージとして捉えてもらえればと思います)

このような策定方法であれば、スタッフにとってもより「自分ごと」になると思います。
ここが私の推奨するバリュー策定方法の鍵となります。

バリューの策定の具体的な方法について今回説明させてもらいました。
次回はバリューの浸透方法についてお話をしたいと思いますので、お楽しみに♪

社会保険労務士法人菰田総合コンサルティングでは、企業向けに社員面談や管理職研修、経営者向けに理念策定と浸透のサポート等の人事コンサルティング業務も行っております。
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